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外国人従業員の扶養家族への課税を開始-国内経済への影響を懸念する声も-

(サウジアラビア)

リヤド発

2017年07月19日

石油依存経済からの脱却を目指すサウジアラビアは、石油以外の歳入増のための各施策を発表し、実行に移しつつある。徴税強化もその1つで、7月1日から外国人従業員の扶養家族への課税が始まった。外国人全てが対象とされる新税の適用について、国内のコメントや日系企業の対応を紹介する。

段階的に外国人から税収増を図る

2016年12月に、2017年度予算とともに発表された「予算均衡プログラム(Fiscal Balance Program)」の中で、歳入源の1つとして提案された「外国人従業員扶養家族税」の適用が、7月1日に始まった。

課税額は、2018年6月までは1人当たり月額100リヤル(約3,000円、1リヤル=約30円)、2018年7月からは200リヤル、2019年7月からは300リヤルと、1年ごとに100リヤルずつ増え、2020年7月1日からは400リヤルとなる予定だ(表参照)。

表 外国人従業員扶養家族への1人当たり課税額(月額)(単位:リヤル)
年月 課税額
2017年7月~2018年6月 100
2018年7月~2019年6月 200
2019年7月~2020年6月 300
2020年7月~ 400

(出所)各種資料

サウジアラビア内務省パスポート局は「支払いをしないと外国人居住許可証(イカマ)の更新や再入国ビザの発給ができないため、サウジアラビアに居住する外国人従業員は全て支払いを免れることはできない」としている。「扶養家族」とは、「配偶者」「子供」「両親(義父母)」以外に、会社の従業員が身元を保証している「メイド」「運転手」も含まれるとのことだ。

なお、パスポート局は公式ツイッターで、政府機関・政府系機関と雇用関係にある従業員は課税対象ではないと伝えている。

2018年1月からのVAT導入も決定

「ガルフビジネス」紙(電子版)の試算では、新税導入により歳入は2017年に10億リヤル、2018年は240億リヤル、2019年は440億リヤル、2020年は650億リヤルの増収が見込まれる。

地元紙「アル・ワタン」は、「リヤド商工会議所の投資・証券委員会メンバーのアブドゥラ・アル・マゴロウス氏が『同税は民間部門に対してマイナスの影響がある』と発言した」と報じた。同氏は「従業員の経済的負担が増えることで、企業が賃上げなどをする可能性もあることから、結果的には企業負担が増え、多くの外国人が働く産業分野、例えば建設業やフードサービス業などでコストが上昇する。その反動として、国民の負担が増すと同時に、サウジアラビアへの投資にも悪影響を及ぼす」と警告している。

今回の措置を受けて、扶養家族への課税を回避するために家族を本国へ帰す従業員も出始めており、各種新聞のコメント欄にもそのような懸念の声がみられる。2018年1月1日からは付加価値税(VAT)の導入も決定されており、いわゆる出稼ぎ労働者を取り巻く環境は悪化している。これまでサウジアラビアに働きに来る理由の1つは、所得税がかからないことだった。現時点では個人所得税のほか、買い物時に課されるVATなどもない。今後、扶養家族への課税やVATの支払いが義務になれば、手元に残る金額は減る。このような理由からサウジアラビアを離れる外国人がおり、外国人労働者が国外へ出て行くことで、空き家が増える、消費が落ちるなど、サウジ経済への影響を懸念する声もある。

日系企業や日本人駐在員にも影響

従業員数の多い日系企業に、今後の対応についてヒアリングを行ったところ、「今回の件で会社としては、賃上げなど特段の対応をする予定はない」とする企業の一方で、「従業員1人につき扶養家族3人分までは会社負担とするが、当面1年間様子をみて、検討が必要ならば見直す」とする企業があった。

課税対象が全ての外国人であることから、日本人駐在員へも影響がある。今後は、1年ごとのイカマの更新時や、最長6カ月有効の再入国ビザを申請する際に、家族を同伴している駐在員は、課税負担を求められることになる。

脱石油依存を掲げるサウジアラビアの政策の影響を受けて、外国人や自国民への負担感は増しつつある。皇太子の交代などで政府は若返りを図り、若者の支持を集めようとしているともみられているが、不満の声が全くないわけではない。6月には、たばこやエナジードリンクに100%、ソフトドリンクに50%の物品税を課す嗜好(しこう)品対象の「選択税」が導入されており、さらに2018年1月1日から予定どおりVATが導入されれば、外国人のみならず自国民にも新たな負担を強いることになる。政府は国民の失業率低下を目指す方針だが、なかなか仕事に就けない若者が増えた場合、国民負担増となる政策への反発を招く恐れもあり、先行きは見通せない。

(星出純江)

(サウジアラビア)

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