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企業のスケールアップへの投資不足が課題-スコットランドのライフサイエンス産業(2)-

(英国)

ロンドン発

2017年04月20日

 スコットランド政府が特定する有望6分野で、特に注目されるのがライフサイエンス産業だ。その研究・ビジネス環境と政府による支援の現状と課題について、グラスゴーに拠点を置く生物医学企業システミックの最高経営責任者(CEO)ジム・レイド氏にインタビューした(3月10日)。

ネットワークづくりに尽力、京都大学との共同研究も

2009年創業のシステミックは、グラスゴーと米国ボストンに拠点を構え、新薬の開発や既存薬の再開発、幹細胞療法の開発に必要なマイクロRNA(機能性核酸の一種)の解析テクノロジープラットフォーム提供をする、社員数10人のスコットランド地場企業だ。

同社は創業1年目にしてマイクロRNAスクリーニング技術の開発可能性を評価され、革新的な製品などへ与えられる「スマート(SMART)」と呼ばれるスコットランド政府の助成金を獲得。2012年にはスコットランド地域特定助成金(リージョナルセレクティブアシスタンス)を得たほか、2015年にはエクソソーム(マイクロRNAなどの核酸を含む膜小胞)ベースのツール開発技術を評価されて2度目のSMARTを獲得するなど、注目を集めている。同社は2014年に、幹細胞業界の情報誌「ステムセルアッセイズ」の注目企業トップ10入りも果たしている。

システミックのジム・レイドCEOへのインタビューの概要は次のとおり。

問:欧州、米国、日本、韓国、オーストラリアなど世界で販路拡大に成功しているようだが、成功の要因は。

答:細胞・遺伝子の研究分野は全員が知り合いのような小さな業界だ。だからこそ、地道にコミュニケーションを取り、頻繁に情報交換をすることが、企業の競争力を高める上で重要だ。そのためのコストは惜しまないようにしており、国際研究会議や顧客訪問などで世界中を回っている。日本では、京都大学の山中伸弥教授のチームと共同研究をしている。

産官学の密な連携が生むイノベーティブなビジネス環境

問:スコットランドのライフサイエンス産業の強みは。

答:ライフサイエンスはスコットランド政府が最も注力している産業の1つで、研究・ビジネス支援の充実度は世界トップレベルだと感じている。当社にとって、スコットランド政府の支援は大きい。スコットランド投資銀行は主要株主の1つで、政府の助成金制度が研究プロジェクトの立ち上げや推進に大変役立っている。

また、優秀な人材の集積や現地の大学との共同研究も魅力であり、産学の連携を深める上で、スコットランド政府の役割は大きい。近年では政府の支援の下、グラスゴー大学を含めてイノベーションセンターの開設が進み、産学の長期的かつ密な連携が可能なシステムが構築された。当社も2016年、グラスゴー大学との共同で研究開発論文を発表している。

起業への支援は充実するも、企業のスケールアップに課題

問:スコットランドのライフサイエンス産業が抱える課題は。

答:課題は、企業のスケールアップにかかる投資が不足していることだ。スコットランドにはエンジェル投資家(創業間もない企業に対して資金提供する個人投資家)も多く、スコットランド開発銀行を中心に、起業に対する財政的なサポートは充実している。しかし起業時の投資が集まりやすいのに対して、企業のスケールアップへの投資が集まりづらいという状況がある。持続的な投資が課題だ。

もう1つの課題は、英国のEU離脱(ブレグジット)に関わる問題だ。当社にとって、(英国以外の)EU諸国は市場としては重要性が低いが、主に人材と資金の確保で問題が予想される。現在抱える10人の社員のうち、4人が(英国以外の)EU国籍で、従業員も先行きを心配している。優秀な人材を失うことは会社にとっても、産業全体にとっても、大きな損失だ。また、EUからの補助金やEUの研究機関との共同研究は重要で、これらが縮小されれば大きな足踏みとなる。

しかし、EU離脱の影響はいまだ明らかになっていない部分も多く、今は慌てずに、あらゆるシナリオを想定して十分な準備をしている。悪影響だけでなく、例えば、欧州特許庁からの離脱により、英国は知的財産について独自のより進歩的なアプローチを取れるようになるかもしれないし、良い影響もあると考えている。

写真 システミック最高経営責任者(CEO)のジム・レイド氏(システミック提供)

(松浦美保)

(英国)

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