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特集:グリーン成長を巡る世界のビジネス動向陸上は中国・米国、洋上は欧州で、風力の導入進む
今後稼働予定の大型プロジェクトと日本企業の進出(2)

2021年8月4日

太陽光発電と風力発電(陸上、洋上)の今後の設備容量拡大の見通し、および今後数年で稼働が見込まれる大型プロジェクトの動向を中心に2回にわたって取り上げる。本稿はその後編で風力について概観する。

陸上、洋上ともに過去10年近くでコスト半減

再生可能エネルギーによる発電のうち、太陽光発電の次に大きな伸びが見込まれる風力発電について、陸上(オンショア)と洋上(オフショア)にわけてみていく。陸上風力の年間の新規(追加)設備容量は、2020年が105ギガワット(GW)で2030年は310GW、洋上風力は2020年が6GWで2030年は80GWと、それぞれ予測されている(図参照)。容量でみると陸上が大きく伸び、増加率でみると洋上が大きく伸びる。IEAによると、2025年までは陸上風力は中国や米国を中心に、洋上風力は欧州を中心に、それぞれ設備容量が増えるとみられる。太陽光と同様、風力についても、発電設備導入に向けたインセンティブとともに、発電にかかるコストの低減が導入増加の追い風となっている。風力の均等化発電原価(LCOE)をみると、陸上、洋上ともに過去10年近くでほぼ半減している。陸上のLCOE(世界平均)では2012年の82ドル/MWh(メガワット時)から2020年は39ドル/MWhへ、洋上では2012年の147ドル/MWhから2020年の84ドル/MWhへ、それぞれ下がった(図参照)。今後30年のコスト低下ペースをみると、陸上は緩やかに下がる見込みで、すでに限界近くまで下がってきたとみられる一方、洋上は2020年の3分の1の水準までさらに低減するとみられる。地域別のLCOEをみると、陸上では米国が、洋上では欧州や中国が、それぞれ他の地域に比べて低い。例えば、洋上の欧州では2020年の75ドル/MWhから、2030年に40ドル/MWh、2050年にはさらに25ドル/MWhまで下がると見込まれる。

図:風力(陸上、洋上)の新規設備容量と発電コスト

陸上風力
新規設備容量(MW)については、中国、欧州、米国、インド、その他の順に、 2012年は15161、11005、13399、1121、4644。 2013年は15008、9401、898、1120、4747。 2014年は 20065、10650、4259、4045、9042。 2015年は34110、9808、8341、2623、8841。 2016年は16548、11086、8684、3612、8061。 2017年は14549、11699、6311、4148、6308。 2018年は18491、8378、6820、2440、8538。 2019年は23575、11080、9154、2217、7664。 2020年は69351、8547、14173、1054、11890 。 また、世界の2030年と2050年の新規設備容量(MW)は順に、310000、280000。 発電コスト(ドル/MWh)については、世界(平均)を2012年から2020年まで順に、 82、79、71 、63 、60 、57、51、45、39。 また、地域別の発電コストについては中国、欧州、 米国、インド の順に、 2020年は45、55、35 、50。 2030年は40、45、35、45。 2050年は40、40、30、40 。
洋上風力
新規設備容量(MW)については、中国、欧州、米国、インド、その他の順に、 2012年は81、1472、0、0、5。 2013年は126、1671、0、0、40。 2014年は23、1292、0、0、6。 2015年は119、3020、0、0、86。 2016年は921、1637、29、0、38。 2017年は1308、3169、0、0、18。 2018年は1800、2961、0、0、28。 2019年は1342、3268、0、0、119。 2020年は3060、2889、0、0、63。 また、世界の2030年と2050年の新規設備容量(MW)は順に、80000、70000。 発電コスト(ドル/MWh)については、世界(平均)を2012年から2020年まで順に、 147、139、165、142、116、113、111、93、84 。 また、地域別の発電コストについては中国、欧州、 米国、インド の順に、 2020年は95、75、115、130。 2030年は45、40、60、70。 2050年は30、25、40、45。

注1:新規設備容量(国・地域別)と発電コスト(世界)ともに2020年まで(IRENA)と、2020年以降の発電コスト(国・地域別)と2030年以降の新規設備容量(世界)の予測(IEA)とで出所が異なる。IEAの予測では、2020年以降の発電コストは地域別のみで、世界(平均)はない。
注2:発電コストは均等化発電原価(LCOE)。
出所:国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国際エネルギー機関(IEA)より作成

陸上風力:中国で設備導入が急拡大

2020年の陸上風力の新規発電設備導入量で世界最大となった中国では、発電事業者が、政府補助の期限である2020年末を見据え、開発を急いだことなどにより(2020年11月12日付ビジネス短信参照)、陸上風力の2020年の年間導入量が69GWと大幅に増えた(2018年と2019年はそれぞれ18GW、24GW)。エネルギー大手の国家能源集団は、2020年だけで22GWの風力発電設備を導入している。同社は2021年5月、山西省の陸上風力発電のプロジェクト(100MW)を発表するなど、2021年に入ってからも開発の手を緩めていない。

電力会社の中国華能集団は、北部の内モンゴル自治区(3.6GW)を筆頭に風力発電(洋上を含む)で20GWを導入済み(2019年末時点)。同社は2021年6月、北西部の甘粛省でも陸上風力発電プロジェクト(45MW)を始動させている。

なお、中国では風力や太陽光などの急速な導入に伴い、それらの大規模発電設備の立地する北部や西部と、電力の消費地である東部の沿岸部をつなぐ送電網が必要となる。中国では従来、送電能力不足から電力が十分に利用されないという「棄風」や「棄光」問題が指摘されてきた。ただ、近年、それが解消されてきており、導入設備の有効活用が進んでいる。

米国では、北米最大の独立系電力会社インベナジーが、風力発電プロジェクト「トラバース」(オクラホマ州、設備容量1GW)を手掛けており、2022年前半の運転開始を目指して準備を進めている。また、パワー・カンパニー・ワイオミングが、風力発電プロジェクト「チョークチェリー・シエラマドレ」(ワイオミング州、3GW)を建設中で、2024年に運転開始とされている。他にも、電力・ガス大手ネクステラエナジーによる、風力発電プロジェクト「ハートランド・ディバイドⅡ」(アイオワ州、200MW、2021年末運転開始予定)などがある。

洋上風力:英国近海などで大型プロジェクトが目白押し

洋上風力では、デンマーク電力大手オーステッドを中心に、スウェーデン電力大手バッテンファル(「バッテンフォール」ともいう)やノルウェー電力大手エクイノールなどの北欧勢による建設中の大型プロジェクトが目立つ(表参照)。オーステッドは2019年2月、英国東部沖120キロメートルで世界最大規模の洋上風力発電所プロジェクト「ホーンシー1」(設備容量1.2GW)の営業運転を開始(同年10月までにフル稼働)した。今後、稼働が予定されている案件としては、同じく英国東部の「ホーンシー2」(1.4GW、2022年稼働予定)や、「ホーンシー3」(2.4GW、2020年12月に最終開発段階への移行について英国政府と合意)、台湾西部の「大彰化(Greater Changhua)1、2a」(900MW、2021年3月に建設開始)、「大彰化2b、4」(920MW、2023年に投資最終決定)などがある(2021年6月10日付地域・分析レポート参照)。

バッテンファルは2021年6月、デンマーク最大の洋上風力発電プロジェクト「クリーガーズ・フラック」の全ての発電設備の設置を終え、同年夏以降に商業運転を開始すると発表した。

表:建設中の大型洋上風力発電プロジェクト(一部)
プロジェクト名 国・地域 設備容量 進捗
(運転開始時期)
権益保有(開発)企業 日系企業の関与
ホーンシー2 英国東部 1.4GW 建設中(2022年) オーステッド
ドッガーバンクA 英国東部 1.2GW 建設中(2023年) エクイノール (40%)、SSEリニューアブルズ (40%)、エニ (20%) 日立〔日立ABB〕(高圧直流送電システム)
ドッガーバンクB 英国東部 1.2GW 建設中(2024年)
シーグリーン 英国北部 1.075GW 建設中(2022年) トタルエナジーズ(51%) 、SSEリニューアブルズ (49%) 三菱重工業〔MHIヴェスタス〕(発電設備)
モーレイ・イースト 英国北部 0.95GW 建設中(2022年) オーシャン・ウィンズ (56.6%) 、ダイアモンド・グリーン(33.4%)、CTG (10%) 三菱商事、関西電力、三菱UFJリース(運営)、三菱重工業(発電設備)
トライトン・ノール 英国東部 0.855GW 建設中(2022年) イノジー(59%)、JPリニューアブル・ヨーロッパ(25%)、関西電力(16%) Jパワー、関西電力(運営)、三菱重工業〔MHIヴェスタス〕(発電設備)
大彰化(Greater Changhua)1、2a 台湾西部 0.9GW 建設中(2022年) オーステッド 商船三井(保守管理専用作業船)
雲林(Yunlin) 台湾西部 0.64GW 建設中(2021年) WPD(48%)、双日、JXTG、中国電力、 中電工、四国電力(5社合計で27%)、EGCO(25%) 双日、JXTG、中国電力、 中電工、四国電力(運営)
クリーガーズ・フラック バルト海 0.6GW 一部稼働中(2021年) バッテンファル 日立〔日立ABB〕(高圧直流送電システム)

出所:各社ウェブサイトなどを基に作成

エクイノールは、SSEリニューアブルズ(英国)など(注1)とともに、英国東部洋上風力発電プロジェクト「ドッガーバンクA」(1.2GW、2023年稼働予定)、「同B」(1.2GW、2024年稼働予定)、「同C」(1.2GW、2026年稼働予定)に参画。また、エクイノールは2020年12月、ドイツ電力会社RWEとともに、ロイヤル・ダッチ・シェルなどが立ち上げたオランダ北部の大型グリーン水素事業「ノースH2(NortH2)」への参加を発表した。同事業では、2030年までに4GW、2040年までに10GWの洋上風力発電の稼働が予定されている。

「ノースH2」では、洋上風力発電設備による再生可能エネルギーから水素を生成し、天然ガスの供給インフラを活用して、オランダおよび欧州の北西部に供給する計画。他にも、オーストラリアの「Asian Renewable Energy Hub(AREH)」(太陽光を含め26GW、陸上風力)(注2)があるなど、近年立ち上がった世界の大型風力発電プロジェクトには、(風力による電力を活用した)水素事業の一環として風力発電を位置付けるものがみられる。

風力による発電量増加に向けては、新規プロジェクトの立ち上げだけでなく、発電設備(タービン)の大型化(注3)の取り組みもみられる。シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(スペイン)は2020年5月、1基14MWの設備容量の発電設備(タービン)の開発を発表。また、ヴェスタスは2021年2月、15MWの発電設備の導入を発表した。GEは2021年5月に、14MWの発電設備をドッガーバンクCに87基納入することが決定したと発表している。発電設備の大型化が進めば、建設やインフラ(送電線など)コストを抑えることができる。特に陸上風力に比べて、洋上風力は設備利用率が高く発電効率が良いとされるが、一般的に洋上風力は浮体式も含めコスト面などでの課題はある。それでも、すでに20MWの発電設備の開発の動きが出るなど、技術の進歩により大型発電設備の導入は今後も進むとみられる。

海外洋上風力プロジェクトで経験を積む日本企業

日本企業も近年、海外の大型プロジェクト(表参照)へ積極的に参画し経験を積んできている。欧州では前述の「ホーンシー1」の洋上風力発電所向けの海底送電事業で、三菱商事と中部電力が参画している。台湾では、JERAが「フォルモサ1」(128MW、稼働中)、「同2」(376MW、2021年末稼働予定)、「同3」(2GW、2026年以降稼働予定)の権益の一部を取得している。米国では、関西電力が米国のアビエータ風力発電所(テキサス州、設備容量525MW 、2020年9月商業運転開始)の権益の一部を取得している。三菱重工業は2020年10月、風力発電事業に関するヴェスタスとの合弁関係(合弁会社本社:デンマーク)を解消する一方、2021年2月に同社とともに日本国内に風力発電設備販売の合弁会社を設立するなど、日本に軸足を移しつつ協業体制の再構築を進めている。IEAは、日本の洋上風力発電の設備容量は2040年に4GWと予測(2019年11月時点)するが、日本政府は、同年までに30~45GWと野心的な導入目標を掲げている。日本企業の海外での経験を、日本の洋上風力市場で今後大いに発揮できそうだが、オーステッドが2021年5月に秋田の洋上風力発電プロジェクトへの参加を表明するなど、海外企業も日本市場に注目している。


注1:
ドッガーバンクCはSSEリニューアブルズ、ドッガーバンクAとBはSSEリニューアブルズとエニ、との共同運営。
注2:
同プロジェクトは、オーストラリア政府が2021年6月に環境へのインパクトを理由に不認可とし、調整中。
注3:
世界風力エネルギー協会(GWEC)によると、洋上風力の標準的な発電設備容量は1基6.5MW前後。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課 課長代理
古川 祐(ふるかわ たすく)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課(欧州班)、ジェトロ愛媛、ジェトロ・ブカレスト事務所長などを経て現職。共著「欧州経済の基礎知識」(ジェトロ)。

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