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特集:新型コロナによるアジア・ビジネスの変化を読み解く新メニューやオープンエアレストランなど、新しい業態を模索(マレーシア)

2021年5月20日

新型コロナウイルス禍のマレーシアでは、感染予防対策のため、企業活動、国内外の移動、生活面において様々な制限が設けられている。これをきっかけに、人々の消費行動にも変化が見られるようになった。特に、小売店や飲食店は制限内容が厳しかったこともあり、変革を迫られた企業も多い。

FMCグリーンランドは、「BMS Organics」というブランドで、オーガニック食品小売店や飲食店を展開するマレーシアの地場企業だ。コロナ禍でのビジネスや消費者の変化、今後の展望などについて、最高経営責任者のテリー・リー氏に聞いた(インタビュー日:3月12日)。

質問:
貴社のビジネスについて。
答え:
「BMS Organics」というブランドで、小売店と飲食店を合わせて約60店舗展開している。健康・オーガニックに特化した自社ブランド製品のほか、他社ブランドの製品も取り扱う。小売店での取り扱い製品は、生鮮・冷凍野菜、穀類、乾麺、調味料、飲料、栄養補助食品、パーソナルケア製品、日用品など多岐にわたる。飲食店では、ベジタリアンのスープや丼、デザートなどを提供している。
小売りでは、実店舗での販売に加えオンライン販売にも対応。オンラインでは、自社ウェブサイトのほか、Eコマースプラットフォームとしてマレーシアで主要なラザダとショッピー経由で販売している。また、飲食店でも、店内飲食だけでなく、自社ウェブサイト、グラブフード、フードパンダを通して、フードデリバリーにも対応している。
質問:
新型コロナウイルスの感染拡大による影響は。
答え:
特に飲食店の売り上げが激減した。2020年3月18日以降、感染者数の増加などにより、店内飲食が禁止になったり1テーブル当たりの人数が制限されたりするなど、飲食店向けの制限が厳しかったことが要因。フードデリバリーは継続できたが、店内飲食を賄うほどの利益を出すのは難しい。
他方、小売りビジネスはコロナ禍を機に大きく伸びた。特に自社ウェブサイトでのオンライン販売が好調だ。コロナ以前は全売り上げの5%程度だったオンライン販売の比率は、現在30~40%を占める。オンライン販売を始めたのは5年ほど前だった。当初は実店舗での売り上げを補完する役割としか考えていなかった。オンライン販売の急成長には、コロナ禍での需要増に対応して改善を図ったことが大きく起因したと考えている。例えば、ウェブサイトを改良し、配達日数も見直した。特に配達日数に関しては、提携する輸送会社を変更。原則として翌日配達、注文時間に応じて即日配達にも対応できるようにした。以前は注文から荷物到着まで2~3日かかっていた。
飲食店の方でも工夫し、新メニューとして手頃な価格のビーガンおよびベジタリアン弁当を開発した。雑穀米、おかず2品、デザートが付いて、約9リンギ(約240円、1リンギ=約26円)で、好評を得ている。大家族向けに、オーガニック野菜の詰め合わせのデリバリーサービスも始めた。もっとも、反応は良いものの、利用はそこまで多くはない。詰め合わせに入る野菜の種類がお任せになり、顧客自ら選びたいというニーズの方が高いためだ。
質問:
新型コロナウイルスの影響を軽減するための方策は。
答え:
前述のオンライン販売サービスの改善や弁当の開発のほかでは、農園カフェレストランの開店がある。これは、以前から計画していたのを5年ほど前倒したものだ。「バグズ・パラダイス・ファーム+カフェ」という名前で、クアラルンプール市郊外のプチョンにオープンした。オーガニック野菜の農園とレストランを併設し、オープンエアの屋外施設である点が最大の売りだ。風通しがよく、新型コロナウイルス対策に適すると考えている。
このレストランでは、農園ツアーや農作業体験などの野外アクティビティのほか、オーガニック野菜を使った「スチームボート」と呼ばれるマレーシアの鍋物を楽しむことができる。移動制限令により旅行や屋内施設でのアクティビティが制限される中、屋外での新たな娯楽を提供できる。
質問:
マレーシア人の健康や食に対する考え方に変化はあったか。
答え:
最近では、マレーシア人の健康意識やオーガニックへの関心が以前にも増して高まっていると感じる。新型コロナウイルスの流行が契機となり、免疫力の向上への意識が飛躍的に高まった。消費者は、健康維持や免疫力向上を求めていると思う。
とはいえ、オーガニック食品への需要の伸びは遅い。経済や雇用環境の悪化による所得への影響から、健康食品やオーガニック食品に対する支出が減少している。顧客の購入単価を見ると、半減程度に低下しているのが現状だ。経済回復とともに購買力が向上するものと、期待している。
ちなみに、BMS Organicsの顧客は中華系が圧倒的に多い。しかし、場所によってはマレー系顧客が多い店舗もある。例えば、マレー系住民が多いプトラジャヤの店舗では、約40%をマレー系顧客が占める。
質問:
日本製品は販売しているか。
答え:
日本から輸入している食品もいくつかある。大豆の発酵エキスを使った健康食品、味噌(みそ)、玄米酢など。日本食品の取り扱いは多くはないが、日本食といえば健康というイメージが非常に強い。そのため、弁当や味噌ベースのスチームボートなど、メニューに日本食のコンセプトを取り入れている。良い日本製品があれば取り扱いも視野に入れたい。
質問:
今後の展望は。
答え:
前述した農園カフェレストランのプロモーションを強化していきたい。また、豆乳やアーモンドミルクなどの植物性ミルクの需要がさらに伸びていくのではと考えている。様々なフレーバーの製品開発にも取り組みたい。
店舗展開では、オフィス街を中心に小規模店舗を多数オープンする計画を立てていた。しかし、新型コロナ禍により在宅勤務も増えている状況に鑑みて、拡張計画を停止している。海外展開では、現在、中国で店舗出店、シンガポールでフランチャイズ展開をしている。その他の国での展開も考えたい。
執筆者紹介
ジェトロ・クアラルンプール事務所
田中 麻理(たなか まり)
2010年、ジェトロ入構。海外市場開拓部海外市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)(2010~2014年)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)(2014~2015年)、海外調査部アジア大洋州課(2015~2017年)を経て、2017年9月より現職。

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