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特集:新型コロナによるアジア・ビジネスの変化を読み解くポスト・コロナ見据えた新たな付加価値サービスでスマートシティー化をリード、キャピタランド(シンガポール)
過渡期迎えた不動産業界(後編)

2021年4月9日

シンガポールのキャピタランドは、住宅やオフィス、ショッピングモール、工業団地などさまざまな不動産物件を中国やインド、日本、欧米など世界30カ国以上で開発・運営する東南アジア最大の不動産開発会社だ。新型コロナウイルス流行に伴って変化する不動産入居者の利用にどのよう対応しているのか、ポスト・コロナに向けた戦略は何か、同社チーフ・カスタマーソリューションズ・オフィサーのアイルウィン・タン氏にインタビューした(2021年2月22日)。


キャピタランドのチーフ・カスタマーソリューションズ・オフィサーの
アイルウィン・タン氏 (本人提供)
質問:
新型コロナウイルス流行への対応について。
答え:
直近の対応として、キャピタランドは顧客ニーズの変化に対応すべく、さまざまな取り組みを行った。例えば、オフィス物件については(都心部タンジョンパガーに)完工したばかりの商業ビル(79ロビンソンロード)内にあるコワーキングスペース「ブリッジプラス(Bridge+)」がある。ブリッジプラスは、事業戦略の見直しを迫られている顧客に対して、選択肢と柔軟性を与えるために設置したものだ。われわれのサービスホテルのアスコットでも、一部の部屋を企業のオフィス用途に改装した。なぜなら、誰もが在宅勤務ができるわけではない中、オフィスにも戻れない社員にとって、働く場所の選択肢があることは非常に重要だからだ。また、リテール物件については、当社グループのモバイルアプリ「キャピタスター(CapitaStar)」(キャピタランドが運営する施設で使えるポイントプログラム)の中に、飲食店などが受注・デリバリーなどをできる「キャピタトリーツ(Capita3Eats)」を始めた。こうしたイニシアチブは、新型コロナウイルスで打撃を受けたテナントを支援するためのものだ。
質問:
新型コロナ収束後の未来を見据えた取り組みは。
答え:
顧客に付加価値を提供する取り組みの1つ目として、2020年10月に企業間の協業の拠点として「スマート・アーバン・コイノベーション・ラボ」を開所した。このラボは、企業の大小や、外資・地場を問わずに集まり、互いの資源や専門知識を投入して、特定の課題に取り組むためのものだ。2つ目の取り組みは、人材教育だ。ポスト・コロナの世界の変化に対応するには人材が必要であり、異なる業界から人材を集めて再教育しなくてはいけない。このため、2020年9月に将来の指導者となる人材を育成するエグゼクティブ・ラーニング・センター(ロチェスター・コモンズ)の設置を発表した。3つ目は、環境の取り組みだ。新型コロナは未来を見直す機会を与えてくれたと思う。今後、設計や建設など全てで環境の持続可能性を考慮していくことになる。
質問:
新型コロナを機に在宅勤務の普及が加速し、必ずしもオフィスを必要としない企業も増えているが、そうした変化にどう対応しているか。
答え:
この先、オフィスのスペースが全く必要なくなるということはない。ただ、オフィスの使い方が変わっていくと思われる。ブリッジプラスは、われわれが運営するコワーキングスペースの1つだ。このほか、キャピタランドのコワーキングスペースには、産業向けの「ザ・ワークショップ(The Workshop)」や、ブリッジプラスとザ・ワークショップの中間的な存在である「ザ・ワークプロジェクト(The Workproject)」がある。利用者によって異なるニーズに対応するためにも、異なるタイプのコワーキングスペースを用意している。利用者が求めているのは柔軟性だ。ブリッジプラスはこれまでのコワーキングスペースのような広いスペースではなく、企業ごとの専用スペースを設けることで、自社スペースを確保しつつ協働スペースの利便性も得られるようにしている。
質問:
「スマート・アーバン・コイノベーション・ラボ」の現状と協業の内容について。
答え:
このラボに参加するパートナーは、2020年10月の開所時点の約30社から、(2021年2月時点で)40社以上に増えた。パートナーには、アズビルやパナソニック、SBIインベストメントなどの日系企業も参画している。現在2カ所目のラボ設置を計画しており、非常に順調だ。
パートナーの多くが現在注力しているのがインテリジェントビル(高度情報化建築物)だ。また、スマートモビリティーの分野で、地場企業のSTエンジニアリングやSMRTなどオンデマンド型の自動シャトルバスの実証実験を行っているほか、地場スタートアップのモービタ(Moovita)と自動運転への第5世代移動通信システム(5G)活用にも取り組んでいる。このほか、シンガポールの食糧自給率向上という課題解決のための都市型農業のほか、最近関心が高まっているのが各家庭への医療サービス提供を可能にするヘルスケア分野だ。日本はヘルスケアや先端製造、モビリティー、自然環境の持続可能性の分野に強いことから、日系企業とも協業していきたい。
質問:
不動産開発会社が人材育成にまで取り組むのはなぜか。
答え:
われわれは不動産開発会社として、単に物理的な場所を提供しているだけではない。これからの不動産は、全ての経済活動を包括する入れ物である必要がある。これまでオフィスや工場だけで行われていた経済活動は、これからは自宅を含め、どこでも行うことができる。スマートシティーという概念は単なるテクノロジーではなく、新しいやり方を可能にするプラットフォームだ。その実現のためには、人材の育成が不可欠だ。研修を受けるのは政府機関や民間企業の次期指導者で、リーダーシップやイノベーション、人材開発を学ぶ。既に次世代の指導者育成のトライアルコースを開始しており、2021年末までに研修施設が完成する予定だ。
質問:
キャピタランドの海外、東南アジアでの今後の展開について。
答え:
キャピタランドは保有する資産と展開する国・地域も広く多角化・分散化している。キャピタランドはこれからも、シンガポールへの投資を続けると同時に、東南アジア域内や日本、欧米での投資を続ける方針だ。
われわれは東南アジアではシンガポールのほか、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムにプレゼンスがある。東南アジアでは今後、シンガポールとベトナムに注力していきたい。ベトナムでは住宅とオフィス物件を保有しているが、生産拠点のリスク分散の動きがみられることから、工業物件への投資も計画している。生産拠点の多元化でシンガポール政府は2021年2月3日、官民のイニシアチブ「東南アジア製造業同盟(SMA)」の発足を発表しており、キャピタランドはマレーシア南部ジョホール州のヌサジャヤ・テックパークを拠点にSMAに戦略パートナーとして参画している。

キャピタランド概要

シンガポールを本社とする東南アジア最大の不動産開発会社。オフィスやショッピングモールなど商業ビルから、工場や物流施設、工業団地などの不動産を開発・保有・運営する。シンガポールと中国を中心にインドやベトナムなど世界30カ国の約230都市で不動産開発を手掛ける。シンガポール取引所(SGX)1部上場企業。


執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所 調査担当
本田 智津絵(ほんだ ちづえ)
総合流通グループ、通信社を経て、2007年にジェトロ・シンガポール事務所入構。共同著書に『マレーシア語辞典』(2007年)、『シンガポールを知るための65章』(2013年)、『シンガポール謎解き散歩』(2014年)がある。

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