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特集:新型コロナによるアジア・ビジネスの変化を読み解く新型コロナ禍でオンラインショッピングの利用急拡大(オーストラリア)

2021年4月9日

オーストラリアは、外出制限などの厳格な制限措置が奏功し、新型コロナウイルス感染抑制に成功した国の1つと言われている。人々はステイホームを余儀なくされたことから、買い物をする場所が実店舗からオンラインへ移行した。オンラインショッピングの急伸に伴い、多くの企業がオンライン販売への移行や関連事業への投資を拡大しているほか、オンライン販売に関連したサービスでビジネスを拡大するスタートアップも出てきた。本稿では、新型コロナ禍におけるオーストラリアのオンラインショッピングの現状や、企業の取り組みを紹介する。

オンライン小売売上高が急増

オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、早期に厳格な措置を講じた。連邦政府は2020年3月から国民の海外渡航を禁止し、外国人の入国も制限するとともに、飲食店などの営業制限や外出制限を実施した。同年5月には制限措置を段階的に緩和する計画を示したものの、その後にクラスターが発生した地域では、州や地域単位で厳格な外出制限を課し、隣接する州は州境を閉鎖するなどの移動制限を行った。観光業や宿泊・飲食業をはじめ、制限措置によって大きな打撃を受けた国内経済に対して、賃金補助や減税などの大規模な経済支援策も打ち出した。しかし、28年以上にわたって景気後退(2四半期連続のマイナス成長)のない世界最長記録を更新してきたオーストラリア経済は、2020年の実質GDP成長率がマイナス2.4%となり、同年第1四半期(1~3月)と第2四半期(4~6月)には2四半期連続でマイナス成長を記録した。

制限措置によって多くの企業や消費者がステイホームを余儀なくされたことから、オンラインショッピングの利用が急拡大した。オーストラリア統計局によると、2020年のオンライン小売売上高(季節調整値)は、前年比57.8%増の327億4,890万オーストラリア・ドル(約2兆7,509億760万円、豪ドル、1豪ドル=約84円)に達した(表参照)。これは、2020年の総小売売上高の9.4%を占めており、2019年の6.3%から3.1ポイント拡大した。特に、国内で感染が拡大し、制限措置が導入された3月から4月に急増した。その後、メルボルンを州都とするビクトリア州で外出制限が再び導入された8月には、前年同月比78.8%増の31億4,060万豪ドルを記録した。

表:オンライン小売売上高(季節調整値)

四半期別(単位:100万豪ドル、%)
項目 2019年 2020年
10-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
食品 1,500.7 1,586.8 2,068.3 2,523.9 2,538.2
食品以外 4,055.8 4,374.4 6,381.4 6,702.4 6,573.4
合計 5,556.4 5,961.2 8,449.8 9,226.3 9,111.6
通年(単位:100万豪ドル、%)
項目 2019年
金額
2020年
金額 前年比
食品 5,531.3 8,717.2 57.6
食品以外 15,221.8 24,031.6 57.9
合計 20,752.8 32,748.9 57.8

注:数値は各月の原系列合計。
出所:オーストラリア統計局

大手のナショナル・オーストラリア銀行が発表したオンライン小売り販売指数によると、国内事業者によるオンライン小売売上高は2020年12月までの1年間で36.3%増加した。商品カテゴリー別では、ゲーム関連・玩具(76.9%増)、持ち帰り食品(72.3%増)が大きく伸びたほか、食品・酒類(43.7%増)、百貨店関連雑貨(42.1%増)などの増加も顕著だった。

「オーストラリア・ポスト(AP)」によると、2020年にオンラインショッピングを利用した世帯数は前年比10%増の890万以上に達した。2020年12月には、クリスマス需要によって同月の小包取扱量が前年比で約20%増加し、月間では過去最高となる5,200万個以上を記録したという。

APが2020年10月に発表した新型コロナ禍における電子商取引(EC)利用実態調査によると、消費者の39%が「新型コロナウイルスに関する安全性」をEC利用の主な理由として挙げており、「外出制限による店舗へのアクセス不可」も22%に上った。ビジネスの観点からみると、小売企業の61%がECの利用によって営業を続けることができ、73%がEC利用によって雇用を維持することができたという。APは、制限措置が緩和されて実店舗の営業が再開した後も、オンラインショッピングの傾向は続くと見込んでいる。

大手企業は物流倉庫への投資加速

オンラインショッピングの急伸に伴い、企業はオンラインへの移行や関連事業への投資を拡大している。

米国大手アマゾンは2017年12月にオーストラリアへ進出し、2018年6月に同社の主力サービスであるアマゾン・プライムを開始した。EC関連のコンサルタントを手掛けるオーストラリア企業パターンが2020年7月から8月にかけて行った調査によると、過去1年間にアマゾンを利用したと回答した者は2019年から50%以上増加し、オーストラリアのEC利用者全体の47%を占めたという。また、過去1年間のアマゾン利用者の3割は、外出制限が課されたためにアマゾンを利用したと答えている。その結果、アマゾンのオーストラリア事業における2020年の売上高は12億1,000万豪ドルに達し、前年の5億6,210万豪ドルから2倍以上増加したという。

アマゾンはこれまで、シドニー、メルボルン、パースの3カ所に配送(フルフィルメント)センターを有していたが、オンラインショッピング需要の高まりを受け、物流倉庫への投資を加速している。アマゾンは2020年6月、ブリスベンにフルフィルメントセンターを開設し、同年12月に操業を開始した。また2020年6月、5億豪ドルを投じてシドニー西部の工業団地に約20万平方メートルのフルフィルメントセンターを建設する計画を打ち出した。同センターは、最新のロボットシステムを組み込んだ24時間年中無休の配送拠点となる予定で、2021年のクリスマスまでの操業開始を目指している。新たに1,500人の雇用を生み出すほか、将来的には同地域で2026年に開業予定の西シドニー空港やその周辺に開発されるエアロトロポリス(空港都市)とも接続する予定だという。さらに、2020年10月には、メルボルン郊外に3万7,000平方メートルの新たなフルフィルメントセンターを開設し、2021年後半に操業を開始すると発表した。アマゾンがオーストラリア国内で保有するフルフィルメントセンターは全6カ所となり、2020年から2021年にかけて倍増することになる。

外出制限に伴い、オンラインで食品を購入する消費者も急増した。オーストラリアの小売り大手ウールワースは、新型コロナウイルス感染が拡大した当初、自宅を離れることができない高齢者や障害者、隔離対象者などに向けて、オンライン注文から配送までをサポートする「プライオリティー・アシスタンス」サービスを開始した。配送では、ラストマイル配送企業シェルパ(Sherpa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )やドライブ・イエロ(Drive Yello外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )と連携し、配送能力を強化した。

アマゾンと同様に、ウールワースも物流倉庫への投資を強化している。ウールワースは2020年6月、シドニー西部に2カ所の配送センターを建設する計画を発表した。1つは自動化された地域配送センター、もう1つは半自動化の全国配送センターとなる予定で、最大7億8,000万豪ドルを投資する計画となっている。同年10月には、自動化技術を導入したマイクロフルフィルメントセンターをメルボルンに開設し、操業を開始した。フルフィルメントソリューションを開発する米国のスタートアップのテークオフ(Takeoff)が開発した技術を活用し、商品のピッキングから出荷までの作業を効率化することによって、これまでの5倍以上のオンライン注文を処理することができるという。さらに、同年12月には、オンライン注文向けのフルフィルメントセンターをシドニー西部に開設した。同センターはウールワースにとってオーストラリア最大となる1万5,000平方メートルの敷地面積を有し、毎週追加で2万件以上のオンライン注文に対応できるようになるという。

なお、米国不動産大手コリアーズ・インターナショナルは、オーストラリアではEC市場の拡大によって、2022年末までに270万平方メートルの倉庫需要が生まれると見込んでいる。

スタートアップがオンライン販売の課題解決

オンライン販売の課題を解決するサービスでビジネスを拡大するスタートアップも出てきている。

外出制限や社会的距離の確保のため、多くの小売店がクリック・アンド・コレクト(オンラインで購入した商品を店舗などで受け取るサービス)を提供したが、商品の受け取りのために順番待ちの列が店の外まで延びることもあったという。そこで、オーストラリアの家電大手JBハイファイや複合企業ウェスファーマーズ傘下のディスカウント小売りチェーンKマートなどは、ソフトウエア企業ソーシャルQ(Social Q外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )のサービスを利用している。2020年6月にサービスを開始したソーシャルQは、クリック・アンド・コレクトの効率的な運用を可能とするオンライン予約・管理システムを提供している。買い物客はソーシャルQを使って商品の受け取り場所と時間を予約できるため、受け取りの列に並ぶ必要がなくなる。店舗側は、買い物客がいつどのように店舗へアクセスしたのかをデータで管理でき、そのデータをサービスの改善などに活用することができるという。

ユニクロ・オーストラリアをはじめ、フランスの高級ブランド大手のLVMHモエヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下で化粧品や香水を扱うセフォラ、オーストラリアの家電・家具大手ハービー・ノーマンなど、大手小売企業も活用する物流サービスを提供しているのがシップピット(Shippit外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )だ。2014年設立のシップピットは、小売業者向けのオンライン配送管理システム(小売り物流ソフトウエアプラットフォーム)を開発した。送り主は、複雑な輸送ルールを設定する必要がなく、配送に最も適した運送業者を見つけ、複数の運送業者をワンクリックで予約できる。また、買い手は、オンライン注文から配送が完了するまでの間、商品が現在どのような配達状況にあるかを追跡できるという(2020年12月23日付地域・分析レポート参照)。

そのほか、ECプラットフォーム構築を手掛けるマーケットプレーサー(Marketplacer外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )、人工知能(AI)を活用したEC用ソフトウエアを提供するパティキュラーオーディエンス(ParticularAudience外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )、中小企業向けに顧客データ分析サービスを提供するレクサー(Lexer外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )などのスタートアップもビジネスを拡大している。

オーストラリア連邦政府は2020年9月、デジタル技術の活用によるビジネスの成長と雇用の創出を支援するため、約8億豪ドルを投資する計画を発表した(2020年9月30日付ビジネス短信参照)。この計画では、第5世代移動通信システム(5G)の展開加速、中小企業のデジタル技術活用支援、フィンテックの海外展開支援や対内投資誘致、現行の決済システムに関する規制の見直しなどが盛り込まれた。こうした取り組みによって、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、オンラインショッピングを取り巻く環境が整備され、ポスト・コロナでもオーストラリアのEC市場がますます拡大することが期待される。

執筆者紹介
ジェトロ・シドニー事務所
住 裕美(すみ ひろみ)
2006年経済産業省入省。2019年よりジェトロ・シドニー事務所勤務(出向) 。

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