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特集:高度人材の宝庫ロシア:魅力と課題ウクライナ人起業家、日本での女性のメンタルケアサービスを展開

2021年6月29日

日本でも行政が長年取り組む周産期メンタルケア。現在もなお、重要な社会課題の1つとされる。この問題を解決すべく、妊婦や子育て中の女性をメインターゲットとして日本で事業を展開するのが、ウクライナ人留学生が起業したFlora外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。創業者で最高経営責任者(CEO)のアンナ・クレシェンコ氏に話を聞いた(6月11日)。


アンナ・クレシェンコCEO(Flora提供)
質問:
会社の概要と事業内容について。
答え:
当社の設立は2020年12月で、京都市に拠点を置く。妊婦や子育てをしている女性をメインターゲットとし、心のケアに関する事業を展開している。妊娠や育児には多大なストレスがかかり、メンタルの不調を訴えることもある。行政もこうした事態に対処すべく、さまざまな策を講じている。しかし、今なお大きな社会課題の1つだ。こうした問題の解決に取り組みたいと思い起業した。
主な事業内容は表のとおり。
表:Flora事業内容
事業 事業内容
オンラインでのグループセッションの開催 離乳食、睡眠、性教育といったテーマを設定し、参加者同士の悩みや不安を共有する場を提供。
アプリによる健康管理およびメンタルサポート 心拍数や歩数、睡眠パターンといったデータを活用したストレスチェックや、チャットボットを利用してユーザーが自身の悩みや不安を相談できるサービスを提供。
イベントの開催 企業向けに、妊娠や子育てに関するセミナーや個別相談会などのイベントを実施。

出所:同社インタビューを基にジェトロ作成

既存サービスとの差別化という点では、オンラインのグループセッション開催が挙げられる。こうしたサービスはこれまで、オフラインでは提供されていた。しかし、オンライン手法を用いたものはあまりみられなかった。料金体系はサブスクリプション(購読)方式を採用。定額でオンラインセッションに何度も参加できるのがメリットだ。
質問:
人員態勢は。
答え:
従業員数は12人。 そのうち、当社の共同創業者で最高技術責任者(CTO)なのがイワン・セレズノフ氏だ。私と同じウクライナ出身で、生体工学が専門。現在、大阪大学博士課程に在籍している。当社のアプリ開発は、セレズノフ氏のつながりを活用してウクライナのエンジニアに業務委託している。ウクライナのIT人材は非常に質が高く、コストも安価なため重宝している(2020年7月29日付地域・分析レポート参照)。
セレズノフ氏とは共通のウクライナ人留学生を介して知り合った。当時、私は既に起業を考えており、セレズノフ氏の持つ心拍数や脈拍などの生体データを計測する技術・ノウハウが私の欲していたものだった。そうしたことから、共同創業の話を持ちかけた。

クレシェンコ氏(左)とイワン・セレズノフ氏(Flora提供)
質問:
CEOご自身の経歴は。
答え:
ウクライナのオデッサ出身で、国立オデッサ大学を卒業した。学生時代は外交官を志し、アジア、特に中国や日本、韓国の国際関係を研究していた。ウクライナとは全く違う文化や雰囲気に引かれて日本に興味を持ち、文部科学省の留学プログラムを利用して来日した。1年間、日本語学校で日本語を学習。その後、2018年に京都大学法学部に入学し、国際政治や国際法を学んだ。
質問:
創業の経緯は。
答え:
大学2年時に米国に短期留学した。シリコンバレーを視察した際に「社会起業」(注1)と呼ばれる概念に出合い、非常に共感し興味を抱いた。解決に取り組みたい社会問題をあれこれ検討する中で、私の親族が妊娠中に直面した困難を思い出し、「全ての妊婦が安心して妊活・出産・育児ができる社会の構築」を目指したいという思いに至った。2019年からビジネスコンテストや起業アイデアコンテストに参加し始めた。2020年に京都のフェニクシーインキュベーションプログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)に選抜され、Floraを立ち上げた。
質問:
日本で起業するに当たっての苦労は。
答え:
苦労したのは主に次の3点。
1つ目は、会社登記や口座開設、給与振り込み、海外への送金などの手続きだ。非常に煩雑で手続きの流れを理解することが難しい。ウクライナでは、これらの手続きはオンライン上で完結することが多く、非常に簡素だ。そのため、日本では戸惑った。
2つ目は人材獲得。優秀な人材は大手企業に就職してしまうことが多く、戦力となるような人材の採用に非常に苦労した。これまでは、私が登壇したピッチコンテストを通じて当社を知った人物から直接応募があり、また、その人物の知り合いを雇用するなど、人とのつながりを活用して採用している。
3点目は日本企業との時間軸の違い。実証実験を行う予定だが、パートナー企業での内部手続きに非常に時間を要している。
質問:
資金調達方法は。
答え:
ベンチャーキャピタルから調達した。起業家の友人と付き合いのあるエンジェル投資からベンチャーキャピタルの紹介を受けた。資金調達手続きには半年ほど要した。契約を結ぶ際には、弁護士や税理士などの支援を受けた。
質問:
今後の目標は。
答え:
現時点で、当社のサービス登録者数は1,200人にすぎない。しかし、2021年末までに5,000人まで増やすことを目標にしている。また、将来的には日本を足掛かりにして、東南アジアやインドなどでもサービスを展開したいと考えている。欧米諸国と比べて、アジア諸国ではフェムテック(注3)の概念がそれほど浸透しておらず、ポテンシャルが大きいと感じているためだ。

注1:
新たなビジネスモデルで社会問題を解決し、かつ利益を上げることのできる事業を起こすこと。
注2:
京都に拠点を持つ、社会起業家を対象とした支援プログラム。
注3:
女性が抱える健康上の課題をテクノロジーで解決できる製品やサービス。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
宮下 恵輔(みやした けいすけ)
2019年4月、ジェトロ入構。海外調査企画課を経て現職。

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