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特集:中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣パティシエの挑戦―グルテンフリー麺の輸出で地元米の消費拡大を/レイク・ルイーズ(岐阜県)

2021年8月25日

カフェレストラン「レイク・ルイーズ」を運営するレイク・ルイーズ(本社:岐阜県海津市)。米粉パンや地元産の富有柿のほか、「べーめん」という変わった名前の麺を販売している。「べーめん」は米粉100%のグルテンフリー麺だ。現在、6カ国に輸出している。同社は第一次産業(米の生産農家)、第二次産業(米粉などの製造業)、第三次産業(麺やパンを売る小売業)全てを手掛ける。いわゆる「6次産業化」を実践しているわけだ。飲食店からの事業領域拡大の経緯と海外ビジネスについて、同社の堀田社長に聞いた(2021年7月20日)。


堀田茂樹代表取締役(レイク・ルイーズ提供)

地元米の消費拡大のためグルテンフリー麺を開発

質問:
グルテンフリー麺「べーめん」誕生の経緯と海外ビジネスに挑戦するきっかけは。
答え:
当社はもともと飲食業だ。私自身はパティシエとして、カフェレストラン「レイク・ルイーズ」で焼き菓子やパンを作っていた。米粉事業を始めたのは2004年。地元に新設される道の駅の商品として、米粉パンを作ったことがきっかけだ。その売り上げは決して悪くなかった。しかし、事業目的の「地元米の消費拡大」を達成できるようなコメの使用量までには至らなかった。そこで、主食に代わるものをと作ったのが、米粉100%のグルテンフリー麺「べーめん」だ。弊社が生産から製粉・製麺・販売まで一貫して管理している。
商品化に当たって、当社のような小さな企業が戦える市場はどこかを考えた。ユニークさを出すために、小麦を一切使用せず、小麦アレルギーに対応した製品、つまりグルテンフリー市場に参入していくことを決めた。他方、国内のグルテンフリー市場は頭打ちだ。そのことから、当初から海外市場を攻めるべきと認識していた。
実際に行動に移したのは2012~2013年ごろ。タイのバイヤーと商談できる岐阜県の事業に参加し、岐阜県産業経済振興センターが出展支援していた海外展示会「Food Taipei」へ出展した。当時は、台湾をはじめ周辺国・地域のグルテンフリー市場がどれだけの大きさかもわからなかった。海外ビジネスの右も左も分からない状態で、「とにかくチャレンジしなければ」という思いだった(注1)。

米粉からできている「べーめん」。ロゴの漢字が麦へんでないことに注目
(ジェトロ撮影)
現在は米国やオーストラリア、ポーランドなどをメインに、6カ国・地域向けに輸出している。主力製品は「べーめん」のほか、グルテンフリーのミックス粉(てんぷら粉やお好み焼き粉)だ。ミックス粉は売り上げの7割が海外向けになる。業務用として毎月数トンを輸出している。
最も大きな輸出先はオーストラリアだ。現在の取引先とは「“日本の食品”輸出EXPO」で初めて出会った。展示会後しばらくして先方からオリジナル製品が作れないか依頼があり、それに応えるためジェトロの専門家と一緒に現地に赴いた。直接会って商談し、ニーズを聞き取り、先方の望む商品を作っていくことで取引開始に至った。当初の取引はてんぷら粉だけだったが、今はお好み焼き粉も追加している。現地のレストランのメニューには「GF:グルテンフリー」や「V:ベジタリアン」といったマークが付される。当社のミックス粉は、そうしたマーク付きで使われている。
一方、米国向けに輸出している商品は「べーめん」ではなく、わさび塩だ。当社は玄米塩も製造している。それを知る友人が紹介してくれた食品会社と共同開発した。当社は小さな会社で営業力に限りがある。販売力のある会社が当社製造の商品を国内外に販売してくれるので、大変助かっている。

海外市場参入のコツは、現地に合わせること

質問:
海外展開のために工夫していることは。
答え:
販路拡大のために、ジェトロや中小企業基盤整備機構が主催するイベントや、「おいしいジャパン」など民間が主催するさまざまな展示会に出展している。他方で、しっかりと商流を持っている会社とつながることができれば、商談会に出る必要はないとも思っている。展示会はあくまでもツールだ。自社が望む取引先バイヤーに振り向いてもらうことが重要なので、取引(候補)先へのメールや新商品の案内は欠かさない。現地に赴くことも多々あった。
賞味期限やパッケージなど、できることは一つ一つ対応している。賞味期限は国内向け商品が半年、海外向けだと材料の工夫や梱包(こんぽう)材変更で1年だ。当初は無添加にこだわっていた。しかし、買う側が無添加よりも長い賞味期限に価値を置いていることにすぐ気づいた。それからは麺の厚さや乾燥率を変えたり、時には添加物を加えたりすることもある。
弊社商品は業務用が主だ。そのため、パッケージを作ることはあまりない。しかし、オーストラリア向けだけは自社で作成している。英語は苦手なので外注し、デザイナーも入れている。ただし、作成に当たっては、現地を視察した際に相当数の商品パッケージの写真を撮った。それを基に、できるだけ現地向けのパッケージに近づけるよう努力した。
現地規制にもできる限り対応している。米国向けにグルテンフリーのお好み焼き粉を輸出する際、貿易商社からプロポジション65(注2)への対応を求められた。調べた結果、ボトルネックはコンブだった。そこで、規制に対応しているコンブを探して代えることで問題なく輸出できた。
麺の性質にも柔軟に対応しなければならない。シンガポールやベトナムなどアジア圏の人々は当社の麺のようなコシがある麺を好まない。コシの良さをどのように伝えていくかを考えてもみた。しかし、結局はパッケージに記載する湯がく時間を日本市場向けより長くした。こうした食文化ともいえる違いは、いち中小企業が頑張っても変わっていくものではない。日本人も固めや柔らかめと、麺の好みはさまざまだ。現地の食べ方がそこにあるのだから、それに合わしていくことが海外市場参入のコツと考えている。
当社が取り組むべき残る課題の1つは「コメで作ったら何がいいのか」をしっかりアピールしていくこと。小麦の代替という位置付けから抜け出せていないので、既存商品の見せ方だけでなく、新商品の開発も視野に入れて幅広く検討していく。

失敗はつきもの、経験値を増やせば見極める力がつく

質問:
輸出で失敗したことは。これから始める人たちへアドバイスを。
答え:
いつも失敗している(笑)。海外ビジネスを始めた当初は、とにもかくにも販路を拡大しようとして交通整理ができていなかった。取引先同士で商流がバッティングをしてしまうのは良くないし、「二兎を追う者は一兎をも得ず」だ。現在は取引先の選定にはしっかり時間をかけている。代理店契約をもちかけられたときはさまざまな条件を逆提案して、簡単に契約を結ばないようにしている。
また、輸出先に頻繁に行くようにしている。失敗体験ではないが、オーストラリアに出張した際の例を挙げる。その時、非常に勢いがあると言われていた現地のとあるスーパーを視察した。私は視察前から「このスーパーに当社の商品を並べたい」と思っていた。ところが、出張前に岐阜の食品会社の友人から紹介を受け現地食品市場に精通する日本人と話したところ、「あのスーパーはやめた方がよい」とアドバイスされた。出張後しばらくして、このアドバイスに従っておいてよかったと思うことになる。当時の日本で流れていた情報と全く異なっていたので、現地に行って収集する情報に勝るものなしと感じたものだ。 これから輸出に挑戦する方々に、せんえつながらアドバイスをさせてもらうとすれば、失敗を恐れないことだ。むしろ、一度は失敗した方がいいとすら感じている。あらゆる場所に顔を出して、国内でしっかり人間関係を構築していくことも大事。輸出をし始めると、さまざまな甘い言葉をささやいてくる人が周囲に増えてくるので、見極めないといけない。その時に相談できる人がいるととても助かるだろう。最後に、自分が持つその国のイメージに左右されずに、まずは現地に行くこと。インターネットで拾った情報を自分で組み立てたところで、現地視察で得る情報にはかなわない。現地の飲食店に話を聞けば、自分の仮説はすぐ崩れていくものだ。その繰り返しによって見極める力がつき、正しい方針に近づいていくと思う。
国内でも海外でも、取引先と信頼関係を構築していくことが最も重要だ。結局は人間関係ができていないと商品は買ってもらえない。新型コロナ禍で多くの人が身に染みて感じているだろう。しっかりとコミュニケーションができ自分と合うと感じられた人と一緒に仕事をしていくことが一番だ。

注1:
世界のグルテンフリー市場規模は、米国や欧州を中心に右肩上がりに拡大しており、2005年の7億9,000万ドルから2024年には104億ドル(予測値)へ、約20年で13倍に拡大する見込み。詳細はジェトロ「2021年度 米国・フランス・ドイツにおける日本産米粉プロモーションのご案内」PDFファイル(192.70KB)参照。
注2:
正式名称「the Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986」(1986年安全飲料水および有害物質施行法)。米国カリフォルニア州で、がんや出生異常などを引き起こすとされている化学物質から市民を保護するため、飲料水資源に混入させないことを目的とした州法。リスト化した化学物質を含む製品を同州向けに販売・流通させる場合、含有量によって製品のパッケージや小売市場で警告を表示する必要がある。詳細は、ジェトロ「よくある質問:プロポジション65」PDFファイル(192.70KB)参照。
執筆者紹介
ジェトロ岐阜
渡邉 敬士(わたなべ たかし)
2017年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2017年~2019年)にて東南アジア・南西アジアの調査業務に従事。
専門はフィリピン・スリランカ。 2019年7月より現職。

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