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セムコープ、サステナビリティ重視の事業推進(シンガポール)

2021年8月19日

シンガポールのセムコープは、事業構成を「ブラウン」から「グリーン」へ転換させるための戦略的計画を表明。サステナビリティ重視の事業に一層取り組んで行く方針を明らかにしている。エネルギーと都市開発の両部門を中心に、再生可能エネルギー事業として太陽光、風力、エネルギー貯蔵関連事業に注力している。

「ブラウン」から「グリーン」への経営転換を図る

シンガポール所有投資会社テマセクの系列企業(コングロマリット)であるセムコープ・インダストリーズ(Sembcorp Industries:通称セムコープ)は2021年5月下旬、サステナビリティを重視した事業に一層取り組んで行くことを明らかにした。同社メディアリリース(注1)によれば、再生可能で統合された都市ソリューション事業の推進で、事業構成を「ブラウン(茶色)」から「グリーン」へ変えるための戦略的計画を明らかにした旨を公表。世界的なエネルギー転換(トランジション)と持続的な発展を支援するため、セムコープはグループ純利益に占める持続可能なソリューションの割合を、2020年の約40%から、25年までに70%へ引き上げることを目指している。

そのため2025年までに、再生可能エネルギー事業は年平均成長率30%、統合都市ソリューション事業は同10%の達成を目標としている(注2)。セムコープの戦略の中心は、温室効果ガス排出量を2030年までに2010年比で半減し、2050年までには排出量ゼロとする大胆な気候対策へのコミットメントにある。また、同社は新たな石炭火力エネルギー事業での投資は行わない、としている。

ウォン・キム・イン同社グループ社長兼CEO(最高経営責任者)は「我々が明らかにした転換計画は、持続的な未来の建設に役割を担うための明確な目標によって動かされる。我々のアジアでの実績と再生可能・都市ソリューション分野での能力を以って、セムコープはアジア大での第一級の持続的なソリューション・プロバイダーになるための良い位置にいる」と述べている。

英国でのクリーンエネルギー事業などに果敢に取り組み

セムコープは、近年、エネルギーと都市開発の両部門に集中した事業に精力的に取り組んでいる。

エネルギー部門では、再生可能エネルギーで、シンガポール、中国、インド、英国、ベトナムなど11カ国を対象として、太陽光発電、風力発電、エネルギー貯蔵庫の市場開拓に取り組んでいる。

屋上太陽光発電では、企業社屋、住宅[公営住宅(HDBフラット)1,500棟]、商業施設、物流会社、学校などに販売・設置。また、浮体式太陽光発電では、子会社のセムコープ・フローティング・ソーラー・シンガポールが公共事業庁(PUB)とともに、7月14日、同国西部のテンガー貯水池にセムコープ・テンガー・フローティング・ソーラー・ファームを公式オープンした。45ヘクタールの水面に12万2,000枚のソーラーパネルを敷き詰め、発電容量60メガワットピーク(MWp)出力の大規模な浮体式太陽光発電設備となっている。


VSIPビルの屋上太陽光発電設備(セムコープ提供)

そのほか最近の事例では、英国子会社セムコープ・エナジーUK(SEUK)が、7月13日、米国クリーンエネルギー企業8リバーズ・キャピタル(8 Rivers Capital)の英国子会社ゼロ・デグリーズ・ホワイトテール・ディベロプメント(Zero Degrees Whitetail Development )と、英国初の温室効果ガス排出量ゼロの発電所開発で協力・合意した旨を発表した(注3)。新たに開発予定の発電所は「ホワイトテール・クリーン・エナジー(Whitetail Clean Energy)」と命名され、イングランド北東部ティーズサイド(Teesside)のSEUKが持つウィルトン・インターナショナル工業団地の敷地内に建設予定である。クリーンで、効果的、低コストな電気を約300メガワット発電可能で、将来発電量の拡張も可能としている。ホワイトテール・クリーン・エナジーは、天然ガスを(空気ではなく)酸素とともに燃焼させるエネルギー生成プロセスを使用し、蒸気の代わりにタービンを駆動するため流体である超臨界二酸化炭素を使用する。また、生成した二酸化炭素は回収され、沖合に貯蔵される。

アジア近隣諸国の工業団地開発にも引き続き注力

また、前述5月のメディアリーリース発表時に、セムコープは、都市開発により持続可能な都市ソリューションを組み込む旨を発表している。これには、工場の屋上への太陽光発電設備の増加や、車両の電化を促進するための電気自動車の充電ポイントの提供など、温室効果ガスの排出を削減するその他の機能や、グリーンカバレッジの増加が含まれる。

これまでセムコープは、都市開発部門で、ベトナム10カ所[ベトナムシンガポール工業団地(VSIP)ビンズン、バクニン、ハイフォン等]、中国3カ所(無錫、南京エコハイテクパーク、四川ハイテクパーク)、インドネシア1カ所(中部ジャワ州都スマラン市郊外クンダル工業団地)で、工業団地の開発・運営に従事している。2019年12月、インドネシア・ジャワ島初の経済特区(SEZ)として正式に指定されたクンダル工業団地(第1期開発面積860ヘクタール)には66社が進出し、うち20社が操業開始済みである(日系企業は金属加工メーカーが1社進出)。また、最近の工業団地新規開発案件としては、2021年3月、子会社のセムコープ・デベロップメントがベトナム不動産大手ベカメックスIDC(Becamex IDC)と、ベトナム中部クアンチ省で、クアンチ工業団地プロジェクトの投資認可を取得した旨を発表。同工業団地は中部フーバイ国際空港(フエ空港)から60キロの場所に位置し、総開発面積は481ヘクタール(第1期開発面積97ヘクタール)となっている。

製造業者向けの屋上太陽光発電の商機が見込めることから、セムコープはシンガポール国内およびベトナムでの屋上太陽光発電販売に取り組んでいる。かつて同社が手掛けていた(シンガポールに近接する)インドネシア・バタム島やビンタン島の工業団地入居企業とのビジネス上のコネクションなども生かし、シンガポールの製造業者や、ベトナムでもVSIP進出企業など向けの販路開拓に取り組んでいる。セムコープ関係者は「環境対応への関心の高まりから、シンガポールやベトナムのみならず、今後、中国やインドネシアでも、屋上太陽光発電の営業に取り組んでいきたい」と述べている。


屋上太陽光発電設備の保守・検査にドローン利用(セムコープ提供)

注1:
Sembcorp Media Releases, ”Sembcorp Unveils Strategic Plan to Transform its Portfolio from Brown to Green”, May 27,2021
注2:
セムコープは現在世界中で約3.3ギガワット(GW)の再生可能エネルギーの生産容量を有している。その再生可能エネルギーの事業構成は、太陽光、風力、エネルギー貯蔵となっている。 同社は、ポートフォリオを「ブラウン」から「グリーン」に変換する戦略的な計画の一環として、総設備再生可能エネルギー容量を2020年末の2.6GWから、2025年までに10GWへ4倍にすることを目指している。
注3:
Sembcorp,” 8 Rivers Capital and Sembcorp Energy UK to collaborate on development of the UK’s First Zero emissions power plant-Whitetail Clean Energy”, July 14,2021
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部上席主任調査研究員
川田 敦相(かわだ あつすけ)
1988年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、シンガポール、バンコク、ハノイ事務所などに勤務、海外調査部長を経て2019年4月から現職。主要著書として「シンガポールの挑戦」(ジェトロ、1997年)、「メコン広域経済圏」(勁草書房、2011年)、「ASEANの新輸出大国ベトナム」(共著)(文眞堂、2018年)など。

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