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ドイツの2020年の乗用車新規登録台数、2010年以来の低水準に
低排出ガス車は急増、充電設備の整備を急ぐ

2021年6月25日

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年のドイツの乗用車新規登録台数と生産台数は急減した。他方、同年7月の電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の購入助成金増額を契機に、低排出ガス車の急増傾向が続く。ドイツの自動車メーカーも低排出ガス車に軸足を移している。連邦政府は、充電施設を拡充すべく、法改正や各種助成制度の整備を進めている。

国内乗用車新規登録台数は300万台を下回る

連邦自動車局(KBA)は2021年1月8日、2020年のドイツ国内の乗用車新規登録台数を前年比19.1%減の291万7,678台と発表。2010年に291万6,260台を記録して以来の低水準になった。主要メーカー・ブランド別にみると、ドイツ3大自動車メーカー・ブランドが上位を占めた(表1参照)。首位のフォルクスワーゲン(VW)が前年比21.3%減の52万5,612台。2位のメルセデス・ベンツが30万3,185台で10.6%減少した。次いで、BMWが13.7%減の24万968台で3位になった。日系メーカー・ブランドでは、トヨタが7万7,176台で8.7%減だ。トヨタが展開する高級車ブランドのレクサスは3,530台で1.6%減少した。マツダが4万4,346台で38.1%減と大きく減少。この減少で、三菱自動車(4万4,985台、13.7%減)とほぼ並んだ。そのほか、日産が12.0%減の3万4,765台、スズキが44.8%減の2万2,415台、ホンダが25.4%減の1万1,696台、スバルは5,407台で7.9%減少した。韓国メーカーは、現代が10万5,051台で18.9%減、起亜が6万4,296台で7.6%減少した。

表1:メーカー・ブランド別ドイツ国内乗用車新規登録台数(2020年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 メーカー・ブランド 台数 シェア 前年比
上位10メーカー・
ブランド
VW 525,612 18.0 △21.3
メルセデス・ベンツ 303,185 10.4 △10.6
BMW 240,968 8.3 △13.7
アウディ 213,934 7.3 △19.9
フォード 194,250 6.7 △30.6
シュコダ 181,198 6.2 △13.0
オペル 146,219 5.0 △32.3
ルノー 125,318 4.3 △4.4
セアト 114,564 3.9 △17.4
現代 105,051 3.6 △18.9
日系メーカー・
ブランド
トヨタ 77,176 2.6 △8.7
三菱自動車 44,985 1.5 △13.7
マツダ 44,346 1.5 △38.1
日産 34,765 1.2 △12.0
スズキ 22,415 0.8 △44.8
ホンダ 11,696 0.4 △25.4
スバル 5,407 0.2 △7.9
レクサス 3,530 0.1 △1.6
合計(その他を含む) 2,917,678 100.0 △19.1

出所:連邦自動車局(KBA)

燃料別にみると、低排出ガス車〔電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)〕が大きな伸びをみせた。BEVは前年比3.1倍の19万4,163台、PHEVは4.4倍の20万469台に急増した(表2参照)。低排出ガス車が占めるシェアは全体の13.6%になった。ハイブリッド車(PHEVを含まず)は68.8%増の32万7,395台となり、シェアを11.2%に伸ばした。他方、ガソリン車は136万1,723台で36.3%減少したものの、シェアでは46.7%と引き続き最大だった。ディーゼル車は28.9%減の81万9,896台となり、シェアは28.1%だった(2021年1月15日付ビジネス短信参照)。

表2:燃料別ドイツ国内の乗用車新規登録台数(2020年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料 2020年
台数 シェア 前年比
ガソリン 1,361,723 46.7 △36.3
ディーゼル 819,896 28.1 △28.9
ハイブリッド
(注)
327,395 11.2 68.8
プラグインハイブリッド
(PHEV)
200,469 6.9 342.1
電気自動車
(BEV)
194,163 6.7 206.8
圧縮天然ガス(CNG) 7,159 0.2 △6.1
液化石油ガス(LPG) 6,543 0.2 △9.8
合計(その他を含む) 2,917,678 100.0 △19.1

注:ハイブリッドにはプラグインハイブリッド(PHEV)を含まない。
出所:連邦自動車局(KBA)

ドイツ自動車産業連合会(VDA)は2021年1月、新型コロナウイルスのワクチン接種が進み感染拡大が阻止されるという前提で、ドイツ国内の2021年の販売台数を前年比8%増の315万台と予測している(2021年2月8日付ビジネス短信参照)。

国内乗用車生産は過去45年で最低水準

VDAの統計によると、2020年のドイツ国内の乗用車生産台数は前年比24.6%減の351万5,488台。過去45年間で最少になった(表3参照)。過去最高は、2011年の587万1,918台だった。2020年のドイツ自動車メーカーによる世界の乗用車生産台数は、前年比16.9%減の1,332万6,336台だった。一方で、2021年5月、2021年の国内乗用車生産台数について、前年比20%増の420万台から同13%増の400万台に下方修正した(2021年5月12日付ビジネス短信参照)。これは、発表時点までの生産状況や半導体チップの世界的な供給不足(2021年3月15日付ビジネス短信参照)などを踏まえた結果だ。

2020年の乗用車輸出台数は、前年比24.1%減の264万6,644台だった(表3参照)。過去最高は2016年の441万1,152台。輸出先を国・地域別にみると、全体の61.2%を占める欧州は24.7%減の161万9,451台となった。米州も減少傾向にあり、輸出台数は31.6%減の36万5,847台となった。そのうち、米国は27.6%減の30万2,363台だった。アジアは13.4%減の58万1,038台となり、うち中国は25万3,904台で5.1%減少した。日本は7万26台で43.9%減と大きく減少した。

表3:ドイツの乗用車輸出(国・地域別)および国内生産台数(2020年)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
項目 台数 シェア 前年比
輸出合計(その他を含む) 2,646,644 100.0 △24.1
階層レベル2の項目欧州(注1) 1,619,451 61.2 △24.7
階層レベル3の項目EU27カ国 986,176 37.3 △26.4
階層レベル3の項目英国 391,821 14.8 △33.9
階層レベル2の項目米州 365.847 13.8 △31.6
階層レベル3の項目米国 302,363 11.4 △27.6
階層レベル2の項目アジア(注2) 581.038 22.0 △13.4
階層レベル3の項目中国 253.904 9.6 △5.1
階層レベル3の項目日本 70.026 2.6 △43.9
国内生産 3,515,488 △24.6

注1:欧州は、EU27カ国、英国、ノルウェー、ロシア、スイス、トルコ、その他。
注2:アジアは、中国、インド、日本、韓国、台湾、タイ、その他。
出所:ドイツ自動車産業連合会(VDA)

連邦政府、CO2削減のため低排出ガス車を普及させる法改正・制度導入を進める

連邦政府は2019年9月に2030年までの「気候変動対策パッケージ」を採択し(2019年10月1日付ビジネス短信参照)、環境保護政策を進めている。2021年5月には気候保護法(Klimaschutzgesetz)の改正法案を閣議決定。連邦議会(下院)での審議が6月10日に開始された。改正法案には、(1)2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも65%削減すること、(2)2045年までに気候中立の達成すること、が規定された。なお、現行の気候保護法では、2030年までの温室効果ガス排出量削減を少なくとも55%、気候中立達成を2050年としている(2021年5月24日付ビジネス短信参照)。また、2020年11月には、燃料排出量取引法(Brennstoffemissionshandelsgesetz)の改正法が施行された。同改正法では、2021年1月からの暖房用と運輸用の燃料(石油、天然ガス、ガソリンおよびディーゼル)に課す炭素税を定めており、2025年までに二酸化炭素(CO2)1トン当たりの値段を25ユーロから55ユーロ、2026年からは55~65ユーロに引き上げる。

連邦政府は、運輸部門のCO2削減を目指すため、特に低排出ガス車(EVおよびPHEV)の普及を促進。複数の助成制度や法律を導入している。例えば、低排出ガス車の購入時には「環境ボーナス(Umweltbonus)」制度で一部助成される(2020年7月15日付ビジネス短信参照)。2020年7月、同制度における連邦政府負担分が倍増されて以降、環境ボーナス申請件数の増加傾向が続く。また、集合住宅でのEV充電設備の設置を容易にするため、2020年12月に集合住宅近代化法(Wohnungseigentumsmodernisierungsgesetz)が施行された。さらに、2020年11月には私用のEV充電設備の設置に対しても助成制度を導入している(2020年12月9日付ビジネス短信参照)。2021年2月に、交通・デジタルインフラ省(BMVI)は私用のEV充電設備設置向け助成制度の予算に1億ユーロを追加すると発表した(2021年3月10日付ビジネス短信参照)。2021年5月には、さらに1億ユーロを追加すると発表している。連邦政府は2021年2月、2023年までに全国1,000カ所の急速充電施設を整備する急速充電整備法案(Schnellladegesetz)を閣議決定(2021年2月24日付ビジネス短信参照)。連邦参議院(上院)は5月にこれを承認、同法は成立した。急速充電法は官報掲載日の翌日に施行される(2021年6月7日付ビジネス短信参照)。2021年3月には、小売業やホテル・レストランなどのセクターに属する中小企業がEV充電設備を設置する際の助成制度も開始した(2021年4月9日付ビジネス短信参照)。

ドイツ自動車大手も低排出ガス車を主軸に

ドイツ自動車大手のVW、ダイムラーおよびBMWも、CO2排出量の削減と低排出ガス車の普及を目指し、戦略を発表している。

VWは2021年3月、2050年までに乗用車、工場および生産プロセスを全てカーボンニュートラルにする目標を発表した。目標達成のため、VWは2025年までに電動化に総額350億ユーロを投資する予定だ。また、2025年までにEVモデルの販売割合を全体の20~25%に引き上げ、2030年を目標に70車種のEVモデルと60車種のハイブリッド車モデルを投入の予定。なお、この発表に先立ち、2020年11月、VWは今後10年間で、約2,600万台のEV、約700万台のハイブリッド車を生産する予定としていた(2020年11月24日付ビジネス短信参照)。

ダイムラーは「アンビション2039(Ambition2039)」の枠組みの中で、2039年までに全乗用車とサプライチェーンをカーボンニュートラルに切り替える計画を打ち出している。メルセデス・ベンツの工場は、2022年から100%再生可能エネルギーを利用し、同年にカーボンニュートラルとする予定。2030年までに、EVとPHEVを合わせた販売が売上高の50%以上を占めることを目指している。

BMWは2019年6月、2023年までに25車種のEVを市場投入する目標を掲げた。BMWの販売台数に占める電動車の割合は、2016年の2.6%から2020年には8.3%に増加している(2020年の販売台数は232万5,179台)。2023年までに、約90%のセグメントでEVモデルを提供できるようになるようになる見込み。BMWは、2025年までにEVの販売台数が毎年5割以上増加すると見込む(2021年4月26日付ビジネス短信参照)。

低排出ガス車が急増、充電インフラ整備が課題

VDAが2021年4月に発表した統計によると、2020年のドイツ国内の低排出ガス車の新規登録台数は前年比3.6倍の39万4,943台〔311台の燃料電池自動車(FCV)を含む〕で欧州最大となった(2021年5月10日付ビジネス短信参照)。国内乗用車保有台数では、BEVは2021年1月1日時点で前年比2.3倍に近い30万9,083台。全体に占めるシェアも、2020年1月1日時点の0.3%から0.6%に増加した。PHEVは27万9,861台で2.7倍に増加し、全体に占めるシェアは0.2%から0.6%となった(2021年3月16日付ビジネス短信参照)。

低排出ガス車の普及に伴って、BEVの普及に必要な充電インフラ整備の不足が懸念されている。国立充電施設センターは2020年11月、2030年にドイツ国内で44万から84万3,000の公共充電施設が必要になると予測した(2020年12月9日付ビジネス短信参照)。VDAが2021年5月に発表した充電インフラのランキングによると、国内の公共充電施設1カ所当たりのBEV台数は17台となった。EUは公共充電施設1カ所当たり最大10台のBEVを推奨しているため、十分な数には届いていない。現時点で、毎月約6万台の低排出ガス車が新車登録される一方、新たに設置される公共充電施設は月約1,000カ所にとどまる。VDAによると、公共充電インフラの不足を補うためには、計算上は週に約2,000の公共充電施設を設置する必要があるという。

自動運転技術の導入を促す法律や助成が相次ぐ

連邦政府は、自動運転に関する法整備も進めている。2021年2月には、道路交通法など自動運転に関する一連の関連法を一括して改正する自動運転法案(Gesetz zum automatisierten Fahren)を策定し、閣議決定(2021年2月16日付ビジネス短信参照)。5月に連邦参議院で承認され、成立した。自動運転法は官報掲載日の翌日に施行される(2021年6月7日ビジネス短信参照)。同法の施行後は、ドイツの公道でレベル4(注1)の自動運転が可能になる。これに伴い、2022年から当レベルの自動運転技術を搭載した自動車の公道での利用を開始したいという。BMVIによると、研究・実験走行ではなく通常走行として認められるのは世界初だ。またBMVIは、法整備と並行して、自動運転関連の研究プロジェクトも助成する。例えば、2020年12月、支援を決めた自動運転、ネットワーク化関連の研究プロジェクト3件が具体的活動を開始するのを機に、総額900万ユーロを助成外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますすることを明らかにした(2021年1月5日付ビジネス短信参照)。

個々の企業レベルでも、自動運転技術の開発が進む。例えば、ダイムラーは2020年10月、自動車部品メーカーのボッシュと駐車場運営APCOAの協力を得て、無人かつ自動で駐車できる自動バレーパーキング(AVP、注2)を、シュツットガルト空港パーキングビルで実験すると発表した(2020年10月29日付ビジネス短信参照)。


注1:
自動車技術者協会(SAE)が定義する自動運転のレベル。レベル3では、限定された領域内でシステムが原則全ての運転タスクを実施する一方、作動継続が困難な場合、運転者が適切な対応をする必要がある。レベル4では、限定された領域内で加速・操舵(そうだ)・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態での走行が可能。
注2:
バレーパーキングとは、運転手に代わり係員が車を駐車するサービス。AVPでは自動運転技術を活用し、無人かつ自動で車を駐車させる。
執筆者紹介
ジェトロ・ミュンヘン事務所
クラウディア・フェンデル
2020年よりジェトロ・ミュンヘン事務所で調査および地域間交流を担当。

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