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アロマでフルーティーな日本酒が人気(マレーシア)
マレーシアの日本酒市場

2021年7月21日

マレーシアでは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年3月以降、感染状況に応じて移動の制限と緩和が繰り返されている。このような状況下、清酒の輸出額は、店内飲食禁止時期に大きく金額が下がったものの、店内飲食解禁時には急回復し、2020年通年で2019年より増加した。本レポートでは、マレーシアの日本酒市場について、ジェトロが行ったプロモーション事業をもとに、購入者属性、嗜好(しこう)性などの観点から、最新の動向および将来の可能性を紹介する。

コロナ禍でも輸出額に伸び

農林水産省の最新の2国間貿易統計(2019年)によると、日本からマレーシア向けの食品輸出額における品目別第1位はアルコール飲料(清酒、ビール、ワインなど)で、輸出額は5億6,222万7,000円だ。また、財務省貿易統計によると、2019年のマレーシア向け清酒輸出額は約2億4,201万3,000円となっている。アルコールの中でも、とりわけ清酒の輸出が多いことがうかがえる。

ドイツの調査会社スタティスタ(Statista)によると、コロナ禍にあった2020年のマレーシアのアルコール飲料市場規模は前年比16.7%減となった。しかしながら、同年の日本からマレーシア向け清酒輸出額は2億7,776万6,000円(財務省統計、図1参照)と、前年比で約15%増加している。さらにスタティスタでは、2025年のマレーシアのアルコール市場規模は、2020年比で約1.53倍に拡大し、リンゴ酒・清酒の市場規模も約1.46倍拡大すると予想する(図2参照)。今後成長が期待されるマレーシアのアルコール市場で、日本酒のマーケットシェア拡大の兆しがみえる。

図1:マレーシア向け清酒の輸出金額
2019年は1月が最も少なく約400万円、3月が最も多く約3,700万円。その他の月は1,200万円から2,500万円の間で月ごとに異なる。2020年は5月が最も少なく100万円未満だった。他方、最も多い9月は約6,400万円となった。9月以降は3,000万円超となる月がほとんどで、2019年に比べて増加傾向だった。2021年に入ってからは3月に1,500万円未満となったが、4月に7,000万円超と大幅に増加した。

出所:財務省貿易統計よりジェトロ作成

図2:マレーシアのアルコール飲料市場規模
ビール、ワイン、スピリッツ、リンゴ酒・清酒の4つのカテゴリーで2019年から2025年までの変化を推計した図。いずれのカテゴリーも2019年から2020年に1割程度減少したが、その後2025年まで次第に増加する見込み。2022年には2019年の市場規模と同等になる。2020年と2025年の金額は、ビールがそれぞれ9億4,300万ドル、14億5,100万ドル、ワインが3億8,500万ドル、6億1,600万ドル、スピリッツが1億8,900万ドル、2億6,100万ドル、リンゴ酒・梨酒・清酒が2,800万ドル、4,100万ドル。

出所:STATISTAよりジェトロ作成

中華系マレーシア人がメインターゲット

マレーシアは、人口3,258万人の多民族国家だ。人口構成比はマレー系を中心とするブミプトラが69.3%、中華系が22.8%、インド系6.9%となっている(2019年時点)。マレー系はほとんどがイスラム教を信仰しており、宗教で飲酒を禁じられている。アルコール飲料消費の大部分は約670万人の中華系となる。また、日本酒は嗜好品であり、アッパーミドル層以上をターゲットとする日本食店を中心に取り扱われる。富裕層の大半を占める中華系が、日本酒の中心的な購入者だ。

売れ筋は5,000円以下、既存顧客による高額商品の購入も

ジェトロは、2021年1月にマレーシアの酒類インポーターであるK2マーケティング(K2Marketing Sdn.Bhd.)と連携して、同社の運営する当地最大のBtoC向け日本酒専門EC(電子商取引)サイト「SAKEKAMI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」において、「日本酒オンラインプロモーション事業」を実施し、日本の酒蔵など35社220商品をプロモーションした。

同事業では、プロモーションバナーの設置、SAKEKAMIによるプロモーション価格での販売(平均して約2割引)、懸賞付き日本酒試飲クイズ、SAKEKAMI のSNSアカウントでのプロモーション動画の投稿、日本酒の嗜好に関するアンケートを行った。


SAKEKAMI内のプロモーションバナー(左)、SAKEKAMIのインスタグラムでのプロモーション動画の投稿(右)
(SAKEKAMI提供)

プロモーション期間における1購入者あたりの平均購入額は、848.9リンギ(約2万2,725円、1リンギ=約26.77円)であった。また、1購入者あたりの最大購入額は5,672.0リンギ 、最小購入額は92.68リンギ だった。購入額上位25%の平均購入額は2,300.5リンギとなった。 商品のラインナップとしては、多くの商品が720ミリリットル(ml)瓶で、全販売本数のうち約半数の単価が200リンギ以下だった(図3参照)。プロモーション期間における1本あたり販売価格の中央値は212.5リンギだった。次に、既存顧客の1本あたりの購入価格の中央値は357.0リンギ、新規顧客は189.6リンギとなった。既存顧客は新規顧客と比較して約2倍の単価の商品を購入する傾向にあったことが分かる。実際、単価1,000リンギ以上の高額商品を購入したのは全体の約1割だったが、その大半は既存顧客だった。

また、プロモーション期間を通じた全購入者のうち、SAKEKAMIサイトへの新規来訪者の割合は52.5%であり、プロモーションによって新規顧客が増加する効果がうかがえた。

図3:金額別の販売本数内訳
新規顧客、既存顧客とも販売本数が最も多いのは1~200リンギで、それぞれ52本、25本。続いて、200~400リンギがそれぞれ30本、14本、400~600リンギがそれぞれ9本、10本だった。600リンギ超の商品については新規顧客への販売本数が合計5本と少ないが、既存顧客については合計22本と相対的に多い。特に1,500リンギ超の商品について、既存顧客への販売は7本だった。

出所:事業結果を基にジェトロ作成

スパークリング日本酒で市場拡大の可能性

事業連携先であるK2マーケティングからは「アロマテイストやフルーティーテイストの商品の販売が好調で、特にこの傾向は日本酒を飲み始めたばかりの購入者の中で顕著であった。一方、辛口やスパークリングなテイストについては、現在のマレーシアの消費者の嗜好に合っていないと感じている。購入者の年齢層としては30代と40代が多かった」とのコメントがあった。

また、マレーシアにおける日本酒普及の第一人者として、日本食普及の親善大使を務めるリン・テック・チョン・トーマス氏は「日本酒を飲みなれた消費者は、日本酒を飲み始めたばかりの消費者に比べ、辛口やスパークリングなテイストに関心を示す傾向にある。実際に、マレーシアではスパークリングワインが人気で、スパーリングの日本酒も消費者の嗜好性に合致する。スパークリングの日本酒は通常の日本酒より輸入関税が高くなるため、流通量が限定的となっている点は課題だが、適切なプロモーションによって今後人気が出る可能性がある」と、今後のマレーシアにおける日本酒市場の拡大の可能性がうかがえるコメントを述べた。

プロモーションの周知はSNSが効果的

プロモーションを知ったきっかけについて、アンケート回答者31人のうち18人がFacebookもしくはInstagramと回答した(図4参照)。すなわち、約58%がSNS経由で認知したということになる。本プロモーションでは、SAKEKAMIのSNSアカウントの既存フォロワーだけでなく、FacebookとInstagramの広告機能を利用し、新規顧客の獲得も狙った。今回の結果から、SNSは外部から新規顧客を販売サイトに誘導するツールとしては効果的といえそうだ。SNS広告やインフルエンサーを利用することで、広告効果を最大化することが確認できた。

図4:アンケート回答者のプロモーションを知ったきっかけ
多い順に、SAKEKAMIウェブページ20人、Instagram12人、口コミ10人、Facebook6人、新聞・マスメディア2人。

出所:事業結果を基にジェトロ作成

執筆者紹介
ジェトロ・クアラルンプール事務所
山田 隆允(やまだ たかよし)
2013年4月、信金中央金庫入社。2019年4月からジェトロに出向し、デジタル貿易・新産業部EC・流通ビジネス課を経て2019年10月から現職。

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